· 

「褒めない」「叱らない」

プライベートの話をさせてください。

 

私は、中2男と小4女の子供がいます。お兄ちゃんは、小1からかれこれ7年間、剣道をしています。先日、娘も晴れて入門して、剣道を始めました。まだ数回の稽古ですが、さすがに兄の様子を長年見てきただけあって、初心者らしからぬ動きをしていました。息子の時は、自分が剣道経験者ということもあって、厳しく、口うるさく関わっていましたが、家内からは

「娘ちゃんには厳しくするな。口うるさくするな」と散々に釘を刺されました(笑)。こうも言われました。「彼女は褒められるとすごくやる気を出す対応だから褒めてあげて。それが、パパやお兄ちゃんからだとなおさらだと思うから」

 

教育や育成の世界にいると、よく議論になるのが。「褒めて伸ばすか」「叱って伸ばすか」というテーマです。

あなたはどちらだと思いますか?指導を受ける側の性格にもよるというのが一般的な考え方です。

 

「叱る」ことで、反発心から「負けるもんか」と頑張る、厳しい経験をすることで、多少のイレギュラーには負けない素養を作る、なんてこともあります。本田宗一郎は、”げんこつ”で仕事を教えた、と言われます。私の営業の師匠も本当に褒めない人でした。ある時、私だけが目標達成して結果を鼻にかけていると、言われたことがあります。

「営業目標は約束みたいなもの。あらかじめ約束していたことをやったとして褒められることはないだろ。目標の2倍の数字をやって初めて褒めてもらえると思え」と言われました。目標達成しても褒めてもらえないのかとさみしく思ったことを思い出します。確かに、「いつか認めさせてやる」と発奮したことを覚えています。

 

一方で、最近の王道の指導法は、「褒めて伸ばす」ようになっています。相対的に見て指導される側が『打たれ弱く』なったこともありますが、心理的には「褒める」ことで承認欲求が満たされてやる気が出る、というのが通説になりつつあります。確かにそう言った効果もあるとは思うのですが、実は「褒めて伸ばす」方法には大きな落とし穴があるのです。そもそも「褒める」ということは「できないと思っていた」「期待していなかった」という背景が含まれます。さらに「できている人からできていない人に与えられる評価」とも言えます。人間関係の観点から行くと、「上下の関係」です。これに気づかず、手放しで「褒めて伸ばす」を実践してしまうと大変なことになります。

一つ目の落とし穴は、「褒められないとやらなくなる」という落とし穴。結果を出す目的が「褒められること」「注目されること」に置かれるので、褒められるという見返りがないとしなくなります。二つ目は、「褒められないと復讐が始まる」危険性があることです。褒められることを期待して行動する人は、結果を出して褒めてもらえないと、「どうして認めてくれないんだ」とマイナスの心理状態になります。それが進行してしまうと「復讐」という段階に入ります。見てくれないことに対して仕返ししようとします。褒めてもらえないのであれば、叱ってもらうことで注目を集めようとし始めることもあります。自傷行為や子供の非行なんかもこれです。こうなると、もう一度プラスのポジティブな意識を呼び戻すのはかなり大変です。褒めて伸ばすことの弊害を意識できているトレーナーはなかなかいません。

 

では、どうしたら良いのでしょうか?褒めてもダメ、叱ってもダメ、無視するのはもっとダメ、となると…

マネジメントの立場で行けば、2つの方法を勧めています。

 

一つは、「感謝すること」です。成果を挙げたメンバーがいれば、「君のおかげでチームの成績が上がったよ。ありがとう。」となります。もう一つは、感謝をベースに「自分の考えを述べること」です。成果が出なくて落ち込んでいるメンバーには、「君の経験は貴重なノウハウになる。これからのチームにプラスになる経験ができたね。」という感じでしょうか。

「自分としては、なかなか今回みたいな経験を持っている人はいないから、貴重だと思うんだよね」といったように、意識すべきは本人と1対1の関係を作ることです。

 

そのためには、メンバーに対する尊敬が必要です。尊敬とは感謝のことです。感謝するためにはアンテナを張って感度をあげておく必要があります。身の回りに起こるどんな些細なことにも感謝できるように気をつけていきたいものです。