· 

「自分がやったほうが早い病」と先回りする親心 〜結局"勇気"の問題なのか〜

毎年のことですが、この時期になると新人研修の登壇依頼があります。仕事に対するマインドセットや基本行動を教えるので、簡単なアップデートはあっても大きく内容は変わることがありません。とは言いながら、セクハラやパワハラなど講師としても注意しなければならないことが多くなっていますので、「講師レクチャー」なるものが毎回あります。今回も「講師レクチャー」を受けにいきました。新任の担当者と上司が同席してレクチャーがありました。そこで追加資料などの必要がありましたが、後日、上司からメールで連絡がありました。もう一人の方が担当と聞いていたのですが「内容を知っている自分がしたほうが早いし確実」というのが上司の理由でした。

 

こういったことは、入り込みをしている会社でもよくあることです。先輩や上司は経験値があるので「自分がやったほうが早い」という場面がたくさんあります。これは家庭でも同じで、結果が予測できる親からしてみれば、自分の子供に失敗して欲しくないという言い訳をしながら、先回りしてトラブルを排除しようとします。

上司の方が早くリタイヤしますし、親の方が早くにいなくなります。教育の目的は、自分の庇護者がいなくなった時に「生きていける力」をつけることです。これを自立といいます。

 

そのために効果的な教育方法があります。それは…『結末を体験させること』です。

 

会議に遅刻してくる人がいれば、「遅刻したら入室できない」という約束をします。1秒でも遅れれば、その会議には一切参加させず締め出します。そして会議終了後に「君の意見が聞きたかったな」とだけ伝えます。

家庭であれば、「宿題を終わらせないとテレビはつけない」のように約束したら、宿題が終わるまでは絶対にテレビをつけない。時間がかかりすぎでテレビの時間に間に合わなければ「今日は残念だったね。明日は間に合うようにがんばろうね。」となります。

 

それでもなかなか勉強しない時はどうしたら良いか、という話になりますが、そんな時は机の上にノートと鉛筆だけ置いておきます。会社であれば「14時から会議開始」と付箋に書いて机の横に貼っておきます。”リマインド”という題名で、会議参加者全員に、会議時開始時間を一斉メールしておく、というのもありです。

ポイントは、「すべきこと」を事前に共有して約束しておくこと、「しなかった時」の対応を徹底的に行うこと、最後に自分の考えとして「君がいて欲しかった」という感想を伝えること、という三段階になるかと思います。

 

本人に任せることになりますが、これには「勇気」が必要です。最初は失敗する可能性が高いでしょうが、それでもあえて「任す」。そして言い訳なしの失敗を体験させる。その勇気が持てるかどうかが大事です。失敗しないようにと先回りする親心は、本人の成長を妨げるだけでなく、新しいことに挑戦しようとする本人の「動機」までもなくさせてしまいます。

 

自分がやった方が早いし確実、失敗するのが確実に予想される、みたいな状況の中で、勇気を振り絞って「任す」という選択をするのが教える立場として必要だと思います。この失敗体験が貴重な本人の成長へと結びつくものだと信じています。

研修などは、この失敗を疑似体験する場面です。仕事という真剣勝負の中では、「失敗が致命傷」になることもしばしば。そこで学校や研修という「疑似体験」の場で失敗を経験しておく。ですので、研修を受講する時には、うまくこなそうとするのではなく、泥臭く失敗を繰り返し「うまくいかない」経験をすることが大事です。セミナーや研修などで全くストレスを感じない(ある意味では講師としてウマイ)ケースがありますが、受講生の成長につながっているかどうかは、甚だ疑問です。

 

失敗の中にこそ本当の成長がある。自分がやった方が早い病、先回り症候群、気をつけたいものです。