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失敗経験と再チャレンジ

もう三年ほど前のことになります。

息子が剣道を始めて数年経ったとき、実家の近くで自分が子供の頃に通っていた道場に「出稽古」(出張飛び入りで稽古に参加させてもらうこと)に行かせてもらいました。その時のご縁で、地元で大会があると声をかけていただき、日程さえ合えばその道場の名前で出場させてもらうことが度々ありました。

ある時、団体戦のメンバーに選んでいただきました。私の地元は千葉県香取市で、現在の住所からは自動車で1時間半ほど。その時大会が行われるのは旭市というところで、会場までは約2時間でした。現地集合が8時半でしたので、余裕を見て朝6時に出発しました。8時過ぎに現地に到着。着替えようと自動車のトランクを開けた息子がフリーズしています。

 

「どうしたの?」と聞くと…

『防具(剣道具)がない」  「え?」

 

何を言っているかわからないと思い、息子の肩越しにトランクを見ると、防具(剣道具)が入っていません。大焦りで自宅に電話すると、家の玄関に一式まとめて置いてありました。家内も「どうする?持って行こうか?」と、そうは言っても電車では2時間以上かかります。先方の道場主の先生に事情を話し、

「試合は午後からなら、これから取りに行けばなんとか間に合うかも」と言うと、その先生は、

「わかりました。うちの道場所属の他の参加者から防具を借りましょう。そんな焦って運転しては事故を起こしてもいけないから。」ということになりました。選手名まで事前にエントリーするタイプの大会でなかったのが幸いして、なんとかことなきを得ました。すでに数年経っていますが、いまだに大会の時には「防具(剣道具)持った?」が我が家の合言葉になっています。

 

感心したのはその後です。

 

試合も無事終わり、帰る間際にもう一度、先生にお詫びに行きました。その時、「お父さんいいですかね?」と言いながら、先生はゲンコツで息子の頭をポカリ。

「今日は試合できてよかったね。いいかい?防具を忘れたのは自分の責任だ。絶対にお父さんやお母さんのせいじゃない。そこを勘違いするなよ。剣道はどんなことも自分で責任を取らなきゃいけないんだ。誰かが準備してくれると甘えちゃいけない。今日は運よくみんなが助けてくれた。みんなに感謝しなくちゃね。」

 

流石にこんな失態をしてしまって今後は声かけてもらえないかなと思っていると、さらに続きました。

 

「また呼ぶからな。お父さんいいですかね? 大丈夫。一度大きな失敗をした子供は、決して二度と同じ間違いはしない。そうだよな?こんなことはもう二度とごめんだよな?」息子は大きくうなづきました。

 

何か失敗があると次を任せることはしません。仕事では失敗できない事情や内容にもよる所がありますが、一度失敗すると再チャレンジの機会を取り上げてしまっていることが多いように思います。しかし、一度失敗していると言うことは普通であれば同じ間違いはしないはず。「あの人は前に〇〇(という失敗)をしているから外したほうがいい」なんて発言をよく聞きます。人は変わるものですし、日々成長します。貴重な失敗体験を次に活かすためのチャンスを取り上げないように気をつけたいものです。